INTERVIEW

2026.07.21

【みなかみ町】小室亮さん

【みなかみ町】小室亮さん

小室亮さん

群馬県みなかみ町

はじめに

群馬県みなかみ町で、農業と地域づくりという二足の草鞋を履きながら、故郷の未来を切り拓いている一人の男性がいます。小室亮さん。都会での会社員生活を経て、なぜ彼は故郷に戻り、土に触れ、地域を支える道を選んだのか。その歩みと、彼が描く「心地よい地域のあり方」についてお話を伺いました。

「人間らしく生きたい」――都会を離れ、故郷・みなかみへ

小室さんは、地元・群馬の高校を卒業後、東京の大学へ進学。その後、大阪の化学メーカーで経理として約6年間勤務し、再び東京で1年半を過ごすという、いわゆる「都会のビジネスマン」としてのキャリアを歩んでいました。


転機が訪れたのは20代の頃。「自然の中での暮らしの方が、人間らしく生きていけるのではないか」という漠然とした思いが芽生え、地方移住に関する本を読み漁るようになったと言います。そんな折、プライベートでの大きな決断が引き金となり、「一度きりの人生、やりたいことをやろう」と会社を辞める決意を固めました。


いきなり故郷のみなかみ町に戻るのではなく、まずは同じ群馬県内の上野村で1年半、ミニトマト栽培のプロジェクトに携わり、農業と地域づくりの基礎を学びました。そして2015年、満を持して故郷・みなかみ町へと戻り、そこから5年間「たくみの里」で働きながら、農家として独立する準備を進めてきました。

試行錯誤の農業経営と「食べていける農家」への挑戦

はじめはエゴマの栽培に着手しました。「当時健康ブームで母親が使っていたエゴマ油に興味を持ったことがきっかけだった」と言います。現在小室さんは、エゴマ以外にもキュウリなど複数の作物を育てています。地域の気候や自身の適性を見極め、品目の選定から経営のあり方まで、今もなお「試行錯誤の連続」だと語ります。


彼の目標は明快です。「農業だけで自立し、生活できる売上を上げること」。

「新規就農者がこの地域に入ってきても、食べていけるモデルがないと続かない。自分がまず形にしたい」という言葉には、一農家としての枠を超え、地域の担い手を増やしたいという強い責任感が滲みます。

「ゆるやかな繋がり」が地域を救う。関係人口へのまなざし

小室さんの活動は畑の上だけに留まりません。町が宣言した「オーガニックビレッジ」推進の中心的役割を担う生産者団体「みなかみスタイルクラブ」の会長を務めるほか、2025年からは地元の農協(JA)の理事にも就任し、組織の内側から地域の農業を支えようとしています。


そんな多忙な日々の中で彼が大切にしているのは、外部から地域に関わる「関係人口」との付き合い方です。

「1回限りのイベントで終わるのではなく、10年スパンで続くような関係を築きたい。」

彼が理想とするのは、ガチガチの管理ではなく、「今月はこれやるけど、来る?」というフランクな呼びかけに対し、何か役に立ちたいという思いを持つ人々がふらっと集まれるような世界観です。

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次の世代が「居たい」と思える町を目指して

「この町をどうしていきたいか」という問いに対し、小室さんは少し照れながらも、現在6歳になるお子さんのことを引き合いに出して答えてくれました。

「自分の子供が、外に出たとしても、またこの町に戻ってきたい、ここにいたいと思えるような、大人が楽しんでいる姿を見せられる場所にしていきたい。」


特定の誰かが頑張るのではなく、多様な人々がゆるやかに繋がり、それぞれが自立しながら助け合う。小室さんの挑戦は、これからの地方のあり方を示す一つの光となっています。

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編集後記

今回の取材にあたり、筆者自身も実際に農作業のお手伝いをさせていただきました。 短時間の作業でも体力を削られるような炎天下の厳しい環境のなかで、毎日丁寧に関わり続けることで農作物は出荷の時を迎えます。普段はデスクワークの筆者にとっては大変な作業でしたが、そうした中でも地域の未来を語りながら楽しそうに汗を流す小室さんの姿は、これからの「豊かな生き方」のヒントに満ちていると感じました。



小室さんのおすすめスポット

「マッチ絵の家」

小室さんが「大好きなお店」として挙げたのが、みなかみ町たくみの里にある飲食店。店主も移住者で、地域のことを深く考えている方だそう。「雰囲気のよさはもちろん、お酒や料理もとても美味しく、ゆったりとした時間を楽しめる」とのことで、大人の社交場としてもおすすめの一軒です。